「自動化」の先には何が!
営業本部(技術開発支援担当) 佐藤 友章
ものづくりの分野では、かつて「自動化」や「ロボット化」などのキーワードが“当たり前”でしたが、昨今では「IoT」や「AI」あるいは「ビッグデータ」や「クラウド」など(以下これらを「先進技術」と総称)のキーワードを目にしないことはないような状況であり、“当たり前”が著しく変化しているように感じます。
つい2、3年前までは「IoTって何のこと?」「AIって以前にも流行っていたよね!」などと傍観者の立ち位置に居たはずなのですが、もうこのようなボーとした発言をすることも憚られるようになってきました。
平面研磨の自動化プロセス
私がここ数年関わってきました『平面研磨・研削装置』の自動化プロセスの開発も、先述のような時代の流れの中で先人の蓄積してきた技術やノーハウを基に進めてきました。ちなみに、ここで扱う加工対象は主にシリコンやガラスあるいは水晶などの非鉄金属の素材で、これらの素材を薄い円板あるいは角板に形成し、これらの表面を超平面状に磨く工程に前記の装置を使用します。この工程を自動化するプロセスを開発してきたわけですが、このような素材は“硬くて脆い”性質で、薄い板状にすると扱う時に割れ欠けが発生しやすく、加工具である平板面に貼りつくなど、かなり“自動化に向いていない”と言われる領域でありました。
このような情勢の中、世界的なトレンドとして“単品種・大量生産品”の代表素材であるガラスやシリコンウェーハなどはIT社会を支える基本中の基本素材であり徹底的にコストダウンを図る必要があることから、飽くなき性能向上への要請に応えるための高精度化への取り組みが活発に進められると同時に、自動化プロセスの推進も強力に行われてきました。私が主に取り組んできた分野がこれに当たります。
その一方で、これら以外の加工対象の領域では、未だに人手による作業を機械化することが技術的に困難(素材の扱いが難しい、生産性が上がらないなど)であったり、投資対効果を考えると現状では投資できない、といった分野が残っていることも事実です。
自動化プロセスの先の展望
現状までの取り組み方を振り返ってみますと、一応の自動化は達成したものの、冒頭で述べましたような「先進技術」を取り込んで更なる生産性向上、製品の性能向上を目指すフェーズにはまだ至っておらず、大勢としてはまだ入り口でどうしようかとやや焦り始めた段階のように感じています。
しかしながら、「先進技術」の切り口での新たなアプローチとして、例えば、
「無線式センサを簡単に工具近くに設置できるので、加工状態を詳細に知ることができる」
「事前にPC上でシミュレーションが精度良くできるので設備設置時の手離れが向上する」
「装置の故障を事前に検知できるので生産性を落さずに生産工程を進められる」
「工場設備の稼働状況をスマホで確認してから寝ることができる」
「生産時の膨大なデータから製品精度の阻害要因がわかり更なる精度向上が可能になる」
「自社の海外工場でも日本で得られたノーハウを簡単に共有化できる」
以上のように、ぱっと頭に浮かぶだけでこのようなテーマが考えられます。 これらのアプローチは、単に装置メーカーによる機械機能・装備の開発だけではなく、機械を運用するユーザー企業とのコラボレーションの拡大による展開が想定されます。
先進技術は社会現象
これまで世の中に何年か毎に登場する「社会的~技術的キーワード」を何度も見てきました。 多くはその業界からの需要喚起を意図とした発信あるいは学者層からの提案ベースの発信などであり、メジャーになる例はほとんど記憶になかったのですが、今回の「先進技術」は社会現象とも言えるような流れを強く感じています。
いずれにしましても、これらの「先進技術」は今までに先人達が積み上げてきた諸技術の集大成の上に成り立っている技術であり、「これらの技術をどう利用して今までに達成できなかったような成果を得るか」は私たちの知識の蓄積と柔軟で斬新な発想を如何に出せるか!に掛かっています。
今後については、現状の自動化プロセスの機能向上や自動化が進んでいない領域への新たな提案を目指して、“着実かつしなやかに”対応していきたいと考えています。