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『キサゲ』のお話し

薄暗くした部屋の中で、熟練工が黙々と定盤の三枚摺りをしている。
白熱電球に照らされたこの『種定盤』は、どの角度から見ても見事である。

「その熟練工の所作は木鶏の境地の如し」

キサゲ作業は、基準となる平面や軸を工作物にスリ合わせ当たりを取り、高い部分をキサゲで削っていく「スリ合わせ作業」の事を言います。そのキサゲ面には、小さく浅い溝が規則正しく分布し油溜まりとなり、工作機械の摺動面(すべり面)の潤滑を良好にする特徴があります。ホブ盤、自動ホブ研削盤、両頭フライス盤等のすべり面や各軸の芯出し等で「スリ合わせ作業」を行っています。

工作物を削る「刃」は、チップ、キサゲ、スクレーパーと色々と言い方は有りますが、超鋼製で幅15mm又は20mm、厚さ2mm、長さ40mm程度の市販品を最近は使用します。チップの先端が命で各職人極秘の形状があり、加工面の材質・硬さ、当たりの大きさ、深さ、形状、むしり用等、職人十色です。

クランプ式チップホルダーも市販品が現状です。ホルダーの腰が重要で、慣れ親しんだ腰(しなり具合)の物でないと作業が出来ません。穴を開けたり、薄くしたり等々細工します。
昔はハイスの薄く細長い板を鞴(ふいご)で吹き、金敷の上で鍛え、チップとホルダーの一体物を職人が自分で手作りしていました。

クランプ式チップホルダー先に木製の柄を付けます。包丁の柄を一回り太くした程度の太さで、長さは職人の体格や作業内容により決めます。通常、腰骨に木製の柄の末端を当て中腰で作業をしますが、工作物の材質等により肩で担ぐ場合もあり、長さを変えて数本は持っています。手の大きさに合わせ部分的に細くしたり削ったりもします。30〜40年物は黒々と見事に光っています。また、使っている砥石を見れば腕が判るとも言われます。

市松・三角・三日月・千鳥とキサゲ模様は色々あります。職人により得意技があり、キサゲ面の趣で誰の面か判ると言われています。究極の達人は、満月〜丸く削れる達人が居たそうです。誰も真似が出来なかった、空中から入り空中に抜ける技です。

一回のキサゲでの除去量(深さ)が体に染み込むまでが大変で、とても辛い作業の繰り返しになりますが、決して“妥協”や“ごまかし”は通用しません、機械の精度は正直です。
機械に『ガタが出る』ということは、摺動部が偏って摩耗すること、すなわち精度が狂います。均一に摩耗すればガタが出ない長期間精度が安定する機械となります。
台頭著しい諸外国に脅かされる事のない特殊分野のキサゲ作業をこれからも伝承してまいります。

腰を曲げてコツコツと気が遠くなるような作業の為、若手に敬遠されがちです。
ところが、先日上司の目を盗み、先輩のキサゲを借り隠れてキサゲの練習をする若手有り、聞くと「カッコいっす」と言い、「早くキサゲが出来るように成りたい」と言う。感心感心!!

製造部長 津久井 稔

 
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